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JIS安全色 JIS Z 9103:2018図記号「―安全色及び安全標識―安全色の色度座標の範囲及び測定方法」は下記サイトにてお求めください。
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS%20Z%209103:2018

解説書
2017年12月
新JIS安全色普及員会

 日本工業規格 JIS Z 9103 は、赤・黄赤・黄・緑・青・赤紫の6色について、色の範囲と参考色を定めており、禁止、指示、注意警告、安全状態などの情報を伝える安全標識をはじめ、さまざまな表示や製品の塗り分けに広く利用されています。

 本規格は1955の制定以来、改正を重ねてきましたが、今回初めて、ユニバーサルデザインの観点から抜本的な見直しが提案されました。改正原案の公開とパブリックコメントの実施に際し、その主旨と内容を説明します。

◆ 参考色の比較 ※本資料で示す色は表示・印刷方法によって実際とは異なります 

対比色の白・黒は、色の再現性における実用上の観点から次の通り調整しました。 白: 現行 N9.5 → 改正案 N9.3 / 黒: 現行 N1 → 改正案 N1.5

◆ 色の見え方の多様性と見直しの主旨

人間の色覚は一様ではありません。一般的な色覚の人は網膜上に、波長が異なる光に反応する3種類の錐体細胞を持っています。一方、1型・2型色覚のように遺伝的多様性によってその内1つの細胞を持たなかったり、波長特性が異なっていたりする人がいます。
また網膜の疾患によって3種の錐体細胞の数のバランスが異なるロービジョンの人や、白内障で水晶体が変色している人もいます。これらの人は日本だけで合計数百万人にのぼり、一般的な色覚の人にははっきりと違って見える2つの色が、見分けにくく感じられることがあります。
しかし、現行のJIS Z 9103 や、それと対応した国際規格であるISO 3864-4 は、色の見え方の多様性への配慮が十分ではありませんでした。そこで、安全色がどのような色覚の人にとっても、できるだけ見分けやすくなるように、以下の調査を行い改正案を作成しました。

◆ 各色の参考色の見直し調査

 まず、色の指定に広く用いられている「日本塗料工業会(JPMA)塗料用標準色」(H版、全632色)と「DICカラーガイド、同パート2、日本・中国・フランスの伝統色」(全2,230色)から、安全色の各色に近似する色あいの色票を幅広く選び、合計966色の候補色票を得ました。
 次に、一般的な色覚の人5名、長波長の光を感じる錐体を持たない1型2色覚(P型強度)の人5名、中波長の光を感じる錐体を持たない2型2色覚(D型強度)の人4名、ロービジョンの中で短波長の光を感じる錐体を持たない3型色覚(T型)に類似した特性を示す人4名の協力者のチームによって、①安全色として標識に使って分かりやすそうか? ②その色名の色に感じられるか? ③相互に見分けやすいか?という観点で、候補色票の中から許容しうる色あいの色票を77色に絞り込みました。

 さらに、候補色票の中に最適な結果を得られるものがない場合、新たな色票を試作しながら各色について候補を2色まで絞り込みました。最後に、これらの最終候補と現行のJIS安全色の色票を合計132名(※1))に見比べていただいて見分けやすさの評価を行い(※2))、最終的な参考色の改正案を選定しました。

※1  左右の目で症状が異なる人はそれぞれの目ごとに調査したので合計で150例
※2  参考色の見分けやすさの評価結果については下記の円グラフ参照

〈参考色の見分けやすさ評価〉

JIS Z 9103 正原案・附属書JCの表JC.1より、現行JIS及び改正案の参考色の見分けやすさ評価の全体結果を示したものです。見分けにくさを生じることが多い14パターンの色の組み合せについて、さまざまな色覚の人132名に比較していただきました。現行JISに比べ、改正案の参考色を用いた組み合わせでは「色の違いがすぐ分かる」という回答が大きく増え、「色の違いがとても分かりにくい」という回答が大幅に少なくなっています。

◆ 一般材料の色の範囲の見直し

色度座標の範囲についても、以下の範囲の色を含むように見直しました。
①参考色の見直し調査の第1段階で得られた、比較的見分けやすいと評価された色票の色度座標及び輝度率
②最終的に選ばれた参考色に対して、米国国家規格協会の安全色規格ANSI Z535.1が定義している色相・明度・彩度の許容差を加味した範囲
③印刷による使用を考慮し、CMYKによる4色プロセス印刷の再現可能範囲
④現行JISとの整合性を考慮し、現行の基準色のxy色度座標が包含される範囲
また、現行JISでは輝度率の範囲については一部しか定義していませんでした。 しかし、1型・2型色覚やロービジョンの人は明るさの情報を色識別の重要な手がかりとしています。そのため、各色が異なって見えるように輝度率の下限と上限を定義しました。

◆ 光源色(信号灯)の色の範囲の見直し

LEDパイロットランプなどの光源色(信号灯)については現行JISで定めている色度座標の範囲が、現在使われている交通用信号灯などの規格と合わなくなっており、色覚への配慮も十分ではありませんでした。 そこで、すでに1型・2型色覚への配慮を盛り込んでいる信号灯の国内外規格に揃えました(国際規格CIE S 004/E-2001、国内規格警交仕規1014号など)。
また、青についてはこれらの規格では定めていませんが、高齢者やロービジョンの人は短い波長の青を非常に暗く感じ特に視認しにくいため、現行JISの範囲から短波長域を削除しました。 安全色がユニバーサルデザインを実現し、より使いやすいものになるよう、以上のような改正にご理解とご協力をおいいたします。
※改正内容の詳細はJIS Z 9103の改正原案を参照

[お問い合わせ]
新JIS安全色普及委員会事務局 特定非営利活動法人 カラーユニバーサルデザイン機構内
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